2019年06月05日(水)

①宇宙の中の水素とからだ

山野井 昇先生 
生体物理医学者。1947年生。東京大学大学院医学系研究科助手を経て現在、一般財団法人未来医学財団理事長。40数年にわたり医療や健康、美容などの最先端研究に従事。著書に「生命の陰陽学」(IDP出版)「水素と電子の生命」(現代書林)「ケイ素の力」(秀和システム)「生き方の処方箋~日野原重明/山野井昇他対談集」(河出書房新社)など20数冊。新技術未来戦略会議議長、日本マイナスイオン応用学会会長、一般社団法人未病システム学会名誉会員など多くの役職を兼務する。

わが国から打ち上げられた小惑星探査機「はやぶさ2」が話題になっている。探査機は、小惑星「リュウグウ」への着陸に成功し、破砕した岩石の微粒な小片を調べたところ、「リュウグウ」に含水鉱物が多く存在していることが分かった。その研究結果は、最近の米科学誌サイエンス(Science)に発表された。これは地球に水がもたらされた過程の解明につながる大きな発見であると各方面で反響を呼んでいる。

一方、ヒトの体をミクロの眼で細かく分析すると多種多様な元素で成り立っている。周知のように体の約70%は水分で占められ、水素と酸素の構成元素で成り立っている。もちろん大気中に多い窒素や、大地に生息する植物などに多く含まれる炭素やリン、カリウム、鉄、ケイ素といった元素の役割も大きい。

これら宇宙の岩石や空気、水の個々の元素の多くは、原子や分子の状態でプラス(+)とマイナス(-)のイオン電荷を帯び、そのイオンの電気的、物理的な特質から様々な機能性を発揮している。

元来、この領域の学問である物理学の当初の目的は、このような広大無辺な宇宙エネルギーへの探求がスタートであった。そして宇宙物理学と並行して、ヒトの病気と健康の素因を究明する「生体物理医学」が誕生し、これは近代医学の中でも比較的新しい学問分野である。

 理科の教科書で学んだ元素周期表の左上、一番目の元素は“水素”である。つまり宇宙で最初に誕生したのが“水素”であるという証である。水素(H)は、原子番号1で、H を原子状水素、H2は水素分子、水素ガス、分子状水素とも理解されている。水素にもプラスとマイナスがあり(H+、H-)、元素の中で一番軽く、一番小さい元素である。

近年、水素は地球環境に優しいクリーンエネルギーとしての活用ばかりでなく、遠い過去の宇宙で誕生した水素が、究極のところ現存する私たちの体内で、複雑かつ微妙な生体メカニズムの調整と大きな役割を担っていることが再認識され始めている。

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