2019年07月08日(月)

プラセンタ業界のキーパーソンに聞く 株式会社ホルス 代表取締役 三井 幸雄社長インタビュー

採取した羊膜は国内の自社工場で原料として製造される

 プラセンタエキスを中心とする高品質な原料を供給している(株)ホルス。SPF豚プラセンタや馬プラセンタはもちろん、医薬部外品にも配合可能な油溶性プラセンタ、医薬部外品(添加剤)用原料として承認された発酵熟成プラセンタ、さらには馬由来の羊膜エキスなどを次々に開発する同社だが、その陣頭指揮を執っているのが医学博士・薬剤師の資格も有している三井 幸雄 代表取締役社長である。その豊富な知識と経験を武器にプラセンタ業界を牽引している三井社長に製品作りに対する思いを聞いた。

 

狂牛病(BSE)が発端となり安全性を重視。SPF豚プラセンタで基盤を固める

 

—— 1990年3月の創立から29年目を迎えました。特に2001年9月に国内で初めて千葉県で狂牛病と診断された牛が発生した事でプラセンタ業界も大打撃を受けました。そういった苦境を乗り越えて来られた中で、次々にプラセンタに関する製品を開発し、業界を牽引してきましたね。

三 井 それまでは牛由来のプラセンタが主流で、それが使えなくなったわけですからそれは大変でした。そこで安全性を重視するためSPF豚にシフトしました。SPF(SpecificPathogen Free)豚は特定の病原菌を持たない豚を指します。基準を満たした健康な種豚を集め、厳重な検定により選定された豚を徹底した防疫管理の下で飼育しているのですが、日本では豚全体のわずか8%程度しか生産されていません。最近、豚コレラが発生いたしましたが、SPF豚は全く心配することがありません。豚コレラの原因はウイルスですが、通常、ウイルスは56℃、30分以上の加熱でほとんど死滅することが報告されています。弊社のプラセンタエキス末は抽出過程とスプレードライによる加熱で自動的に殺菌されますので豚コレラにかかわらずウイルスによる感染等の問題がない、安全なプラセンタエキス末となっています。弊社の豚由来プラセンタの原料はSPF豚の中でも最もランクが高いGP、GGPグレードのSPF豚のみを使用しています。その原料から凍結酵素抽出法によりエキスを抽出しています。

—— 凍結酵素抽出法とは?

三 井 胎盤を凍結させることで成分を安定化させ、有用成分の高濃度抽出を行う方法です。これは旧ソ連のフィラトフ教授が開発した、凍結して活性化させた組織を体に埋め込む組織療法にヒントを得て開発したものです。組織療法は、1945年にレーニン賞(当時の共産圏でノーベル賞に匹敵)を受賞した権威ある治療方法です。プラセンタの有用成分は熱に弱いため、低温処理したプラセンタを酵素によって分解することで、熱に弱い成分も壊すことなく取り出せます。この凍結酵素抽出法によって抽出されたエキスはアミノ酸やミネラルなど栄養分が高く、また熱で壊れやすい活性ペプチドや酵素類なども壊さずに抽出できます。高度な技術と高い生産コストを要する製法です。

 

医薬部外品に添加剤として配合が可能な油溶性プラセンタ

 

—— 油溶性プラセンタエキスに ついて教えてください。

三 井 SPF豚や馬由来の胎 盤から、オリーブ油を使用して抽出した原料です。プラセンタを油溶性にすることで例えば、 クレンジングオイルやリップクリームなどの油性剤型やファンデーションなどのメイクアップ化粧品にも配合が可能になりました。また、ビタミンC誘導体を高配合しても結晶が出ないため、ビタミンC誘導体を安定的 に配合することが可能です。さらに、豚由来の油溶性プラセンタは医薬部外品原料規格に収載されているため医薬部外品の添加剤として配合することもできます。国内で油溶性プラセンタの製法特許も取得しています。

 

世界初のトリプルプラセンタ処方を実現化させた発酵熟成プラセンタ

 

—— 最近のプラセンタ市場は各 社揃って新アイテムを投入し活 況に感じます。その中でも最近、 テレビやネット、雑誌などでも話 題となっている発酵熟成プラセン タは貴社の開発した製品ですね。 その特徴を具体的に教えてください。

三 井 プラセンタは昔から効果効能が優れています。SPF 豚由来も馬由来のプラセンタもとても素晴らしいです。私自身が薬剤師ということもあり、薬学や医学に興味を持っている中、 「発酵させたらどうなるのか?」 という興味を持ち、検討して開発したのが『発酵熟成プラセンタ』です。これはプラセンタエ キスを酵母・黒糖でじっくり発 酵させた後、さらに熟成させた原料です。発酵・熟成により成分が変化し、ビタミンやミネラ ル、アミノ酸などの有用成分が 増加します。このことで通常の プラセンタが持つ美肌効果や抗 疲労効果、吸収率をさらに高められます。すでに発酵熟成プラ センタエキスの製造方法は新規性が認められ特許も取得し、豚 由来の発酵熟成プラセンタは医 薬部外品(添加剤)用の原料としても承認されました。

—— SPF豚由来プラセンタ、 油溶性プラセンタ、発酵熟成プラセンタと次々と進化していますね。

三 井 発酵熟成プラセンタの開発によって、例えば、①水溶 性プラセンタエキスを主剤にすることでメラニンの生成を抑え、 しみ・そばかすを防ぐ「美白」表現が可能になり、添加剤として 医薬部外品の②油溶性プラセンタと③発酵熟成プラセンタを配 合した美白を謳えるトリプルプ ラセンタ処方の『薬用化粧水』の 医薬部外品申請ができるようになりました。

 

再生医療でも注目の羊膜エキス

 

—— ここまでのお話を聞いていると三井社長は研究されるのがお好きだということがとても強く感じられます。その他にも最 近は馬由来の羊膜エキスも開発 されましたね。

三 井 はい。ご存知の通り羊 膜は胎児を包み羊水を保持して いる薄い膜ですが、これにはG DF— 11をはじめとする多種多様な細胞増殖因子(サイトカイン)が含まれています。GDF—11はハーバード大学が研究し、『若返り因子』として世界のトップジャーナルであるSCIENCE誌やCELL 誌に臨床結果が掲載されるなど話題になっている成分で、細胞の元となる幹細胞やコラーゲン、エラスチンなどの増殖を促し、皮膚の再生やアンチエイジング効果が期待できるものです。羊膜は再生医療の分野でも注目されており、目の治療や難病の治療方法としての利用も加速しています。

—— 羊膜エキスにも大きな期待がかかりますが、貴重なものだけに安定供給は難しいのでは?

三 井  ご心配はいりません。モンゴルの大自然で健康に育った馬由来の羊膜を使用しています。安定的に供給するシステムを構築するため、ホルス ブラン モンゴル有限責任会社を現地法人として設立いたしました。私共のグループ会社のブラン製薬㈱が51 %、モンゴルのMONGOLIAN AGRICULTURE DEVELOPMENT GROUP LLCが49 %をそれぞれ出資しています。このモンゴル側で出資いただいた会社は元横綱朝青龍関のご紹介でとても信頼の置ける会社です。モンゴルを熟知している朝青龍関にも取締役として入っていただきました。ですから安定的に羊膜を収集し、埼玉県の最新設備が整う国内工場で高品質な原料を製造できますのでご安心ください。

—— 貴社のプラセンタ原料はそれぞれに特徴がありどれも魅力的に感じます。各社、商品を開発する上でも選択肢が多いのはありがたいですね。

三 井  プラセンタはとても奥が深い素材です。はじめにもお話ししましたが狂牛病(BSE)の発生によりプラセンタ業界は大きな試練を迎えました。その苦境の時に業界のパイオニアであるスノーデンの明壁社長は尽力されました。今のプラセンタ業界にとって明壁社長の功績は大きいですね。私どもはその功績を活かしていかなければならないと思いますよ。それを踏まえて弊社は研究と開発に注力してきました。まだまだ研究の余地は十分にあります。プラセンタはとても素晴らしい素材です。選択肢を多くすることで製品化し販売される企業様の製品開発の選択肢もまた増えます。また、あらゆる応用が可能になります。そのためにはエビデンスが重要になってきますので、弊社では常にエビデンス取得にも力を入れています。また今後は、中国や香港などのアジアの主要国にも進出を計画しています。当グループ会社が5月20日から3日間、中国・上海で開催される中国美容博覧会、秋には香港のコスモプロフ・アジアにも出展いたします。ぜひこれからのホルスにご期待下さい。

 

 

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