2019年04月27日(土)

機能性素材「プラセンタ」市場の動向

エイジングケア素材の定番となったプラセンタ  認知度もあり成熟期を迎える

 今やエイジングケアの素材として定着したプラセンタ。美容、健康の両面から訴求できることや、一般消費者への認知度もあること、さらには医療分野でも活用されていることなどから市場は活況だ。

 プラセンタは化粧品素材を中心に健康食品素材としても活用され、今やエイジングケアの定番商品として定着した。プラセンタは、もともと牛由来のプラセンタとして市場ができあがりつつあったが、2000年初頭にBSE問題が発生し市場に大きな打撃を与えた。その後、牛に変わる代替として豚由来にシフトされた。当時のプラセンタ製品のほとんどは化粧品であり、豚での使用感に疑問を持つ関係者もいた。しかし各企業の努力もあり豚由来のプラセンタの安全性が確認され、プラセンタ市場の礎を作ったと言っても過言ではなく、現在市場の多くは豚由来のものと推察できる。

 その豚由来に一石を投じたのが馬由来プラセンタだ。2006年頃に北海道産サラブレッドの馬プラセンタが健康食品として販売会社によって発表された経緯があることから、おそらく、馬プラセンタが市場に出た初期の頃にあたる。サラブレッドという力強く、綺麗なイメージもあることから次第に北海道産馬プラセンタが注目されるようになった。特に、新規にプラセンタを販売する企業は先行する他社との差別化を図る意味で採用率が急増していった。 

 しかし一方では、商品化するまでのコストが高いという問題が生じる。北海道産サラブレッドの原料コストが高いためだ。それには大きな理由がある。国内のサラブレッドは「走って賞金をかせぐ」経済動物として生産されており、そのほとんどは北海道の牧場で生産されている。近年では年間7000〜8000頭前後の仔馬が誕生していると言われているが、仔馬のオスとメスの違いで経営が大きく左右されるほどであることや、生まれた時期によって売買価格も変動があるため牧場スタッフも仔馬の出産に集中するため胎盤管理まで十分に対応できないといった側面も否定できず、採取量の確保には限界があると推測できる。

 ただし、現在流通されている北海道産サラブレッドのプラセンタは大手牧場と提携しており品質管理は問題ない。「サラブレッドの出産はある程度、日にちや時間が決められているため、獣医を含めて4〜5人のスタッフが立ち会います。そこに冷凍庫をもったスタッフが動向して鮮度を落とさずに回収し工場に持ち帰りますから管理は問題ありません。最近はより良いサラブレッドを育成するためにサプリメントなども肥料として使っているため、そういった馬の管理費用もかかるために、胎盤を販売して充当する大手牧場も増えてきましたし、今後も増量していきます。」(某メーカー)

 サラブレッドの繁殖期は毎年1〜6月で3、4、5月が出産のピーク。当年度分をこの間で採取し販売は秋まで。それ以降が採取できないため供給量に限界はある。

 そういった物理的要因もあり海外産の馬プラセンタへ依存しなければならない大きな理由がここにあるわけだ。

 「国内外産問わず、豚に比べれば原料コストも高く、高級指向なので販売会社の経営者や開発担当者も豚に比べ真剣度が明らかに高いですね。それなりのコスト高になるため、失敗は許されない覚悟の表れを強く感じます。特に中小の販売会社にとっては投資額も大きくなります」(原料供給メーカー)との現場サイドの声もある。

 プラセンタは医療現場でも治療や予防の一環で有用されており、「女性だけでなく最近は男性の患者さんもプラセンタ注射やサプリメントを利用しています」(都内のクリニック院長)ということからも治療・健康維持・予防といった内面的な美容と健康の他、化粧品素材として外面的な美容へのアプローチができる素材という大きな特性を持つことからも、政府の政策の一つとして掲げられている「健康寿命の延伸」を実現させる素材として期待がかかる。

BSE問題                                 牛の脳の中に空洞が出来てスポンジ(海綿)状になる感染症(プリオン病)である牛海綿状脳症(うし かいめんじょう のうしょう:英語Bovine Spongiform Encephalopathy 略称 BSE)で一般的に狂牛病と知られ、1986年にイギリスで初めて発見された。この病気を発症した牛は群れから離れたり、痙攣を起こすなどの初期症状から、音や接触に対する過敏反応、さらに悪化すると立てなくなるといった症状が現れる。イギリスで発生した原因は飼料として与えられた汚染肉骨粉だとされている。日本では2001年9月10日に千葉県内で飼育されていた牛がBSE発症の疑いであることが農林水産省から発表され、後にBSE発症が確定されたことから日本もBSE牛の発生地域となった。これにより牛由来のプラセンタを使用していた化粧品メーカーは自主回収に追われることになり大打撃となった。

 
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