適度な運動が健康に良いことは確かだが、極めて高強度の運動では酸化ストレスの負荷が亢進し、健康やアスリートのパフォーマンスに対してマイナスに作用する可能性がある。この酸化ストレスの影響を抑えるために、体内の抗酸化能を高めることが有効とされ抗酸化ビタミンであるビタミンCやEの摂取が推奨されている。
果物は一般的にビタミンCやEが豊富であり、とくにキウイフルーツはそれらのビタミンがより豊富な果物として知られている。そのキウイフルーツにも、色が緑のタイプと黄色のタイプがあり、後者は前者に比べてビタミンCは約2倍、ビタミンEは1.5~2倍程度多く、より高い抗酸化能が期待される。
今回、女子栄養大学栄養学部栄養生理学の上西一弘氏らの研究によってキウイフルーツがアスリートの高強度トレーニングに伴う酸化ストレスを抑制するのに役立つ可能性が報告され「Sports」に論文が掲載された。なお、この研究では黄色(サンゴールド)のキウイフルーツが用いられており、この‘色の違い’が重要なポイントだ。
この研究では、対象を2群に分け、黄色キウイフルーツを摂取する群としない群での抗酸化能を比較する研究と、酸化ストレスが亢進しているアスリートのみを対象として黄色キウイフルーツ摂取による酸化ストレスレベルの変化を検討する2つの検討が行われた。
1つは大学で陸上競技(中~長距離)を行っている男性アスリート30名(20.5±0.8歳)を15名ずつの2群に分け、1群には黄色キウイフルーツを1カ月間にわたり、1日2個摂取してもらったもの。もう1つの検討は長距離男性アスリート20名(20.4±1.0歳)で酸化が亢進した状態にあるアスリートを多く含む全員に黄色キウイを1日2個摂取してもらい、2カ月間にわたり酸化ストレス関連マーカー、および筋損傷のマーカーであるCKとLDHの推移を評価した。
いずれの検討においても、抗酸化活性は生物学的抗酸化力である「BAP(biological antioxidant potential)」を評価している。BAPの値が高いほど、抗酸化活性が高いことを意味する。一方、酸化ストレスは「d-ROM(diacron-reactive oxygen metabolites)」で評価、d-ROMの値が高いほど、酸化ストレスが亢進していることを意味する。また、BAPとd-ROMの比である「BAP/d-ROM」を算出し、総合的な酸化-還元状態を評価した。
その結果、「酸化ストレスが亢進している男性長距離ランナーが、1日に2個の黄色キウイフルーツを摂取すると抗酸化能が改善される」と結論付けられた。一方で、運動量や睡眠時間、および栄養摂取状況が評価されておらず、「再現性の確認のための追試が必要」とされている。