2020年3月以降、新型コロナウイルスの感染拡大の影響により日本経済全体で大きな打撃を受けたが、健康美容業界は底堅さを基盤に大きな落ち込みはなく、むしろ緩やかではあるが上昇傾向の様相だ。
ステイホームや「おうちエステ」のような新しいライフスタイルが生まれたことで、健康・美容意識の高まりに対応する新たな製品の発売、マスクの日常的な使用によるスキンケア製品への需要、免疫力を高めるためのサプリメント需要などの増加で健康美容業界全体としては新型コロナウイルスによる大きな影響は少なかった感じだ。
●健康美容系サプリメントや化粧品素材が業界を支える
健康や美容商材のサプリメントや化粧品のベースとなっているのが素材だ。健康食品にせよ化粧品にせよ、その製品の大元となる素材原料が重要になり、効果が実感できることが必須になる。最近の傾向としては健康・美容両面での訴求可能な製品が人気で、「長く、元気で、美しく生きて行きたい」という願望を持つユーザーを満足させられるかが鍵を握っていると言える。健康美容両面の素材のパイオニアはキチン・キトサンだ。新鮮さはないもののエビデンスや学術論文は豊富で見直してほしい素材の一つだ。乳酸菌もロングセラー素材で今でも根強い人気。また馴染みは薄いながらビタミンCが豊富な「カムカム」やダイエット素材など業界には優れた素材が多く、こういった素材が業界の根底を支えていると言っても過言ではない。
●注目は女性進出を後押しするフェムテック市場
最近注目されているのがフェムテック市場だ。フェムテックは、Female(女性)と Technology(技術)を合わせた造語で、生理や更年期など女性特有の悩みを先進的な技術で解決することを指す。海外ではすでにフェムテックは市場が形成されつつあり、2025年には5兆3000億円規模への拡大が予測されているものの、日本ではまだ馴染みが薄かった。しかし女性の社会進出が進む中、女性特有の健康問題で女性の社会進出が停滞する事案もあることは否定できない。そういった背景を見据え、2020年10月に『フェムテック振興議員連盟』(会長・野田聖子衆議院議員)が発足され、2021年3月に政府に対しての提言案を提出。提言案では「女性特有の健康課題にかかる医療費支出と生産性損失の合計は6兆3700億円に上る一方、フェムテックの潜在的市場規模は2025年までに約1兆4000億円に達しうるとの試算もある」と指摘もしておりフェムテック振興に向けた動きが活発化した背景がある。
健康美容業界はこれまでに多くの素材が開発され上市され、新たな市場も続々と開拓されてきている。人々の永久のテーマである「健康」と「美容」は常に新しいものへの変化を成し遂げ進化してきた。コロナ禍においても変わることはなく、むしろさらなる進化を遂げた感じだ。これからも、その先も、健康美容業界はさらなる進化を遂げていく。