2021年05月10日(月)

機能性素材「プラセンタ」最前線 プラセンタ市場の動向を探る

●エイジングケア素材の定番となったプラセンタ認知度もあり成熟期を迎える

 今やエイジングケアの素材として定着したプラセンタ。美容、健康の両面から訴求できることや、一般消費者への認知度もあること、さらには医療分野でも活用されていることなどから市場は活況だ。

 プラセンタは化粧品素材を中心に健康食品素材としても活用され、今やエイジングケアの定番商品として定着した。プラセンタは、もともと牛由来のプラセンタとして市場ができあがりつつあったが、2000年初頭にBSE問題が発生し市場に大きな打撃を与えた。その後、牛に変わる代替として豚由来にシフトされた。当時のプラセンタ製品のほとんどは化粧品であり、豚での使用感に疑問を持つ関係者もいた。しかし各企業の努力もあり豚由来のプラセンタの安全性が確認され、プラセンタ市場の礎を作ったと言っても過言ではなく、現在市場の多くは豚由来のものと推察できる。

 その豚由来に一石を投じたのが馬由来プラセンタだ。2006年頃に北海道産サラブレッドの馬プラセンタが健康食品として販売会社によって発表された経緯があることから、おそらく、馬プラセンタが市場に出た初期の頃にあたる。

●サラブレッドプラセンタは馬由来プラセンタの中でも別格な存在

 馬プラセンタの登場によりプラセンタ市場は勢いを増し、現在のプラセンタ市場の活況を築き上げたとも言えるのだ。

 BSE問題を契機に豚由来プラセンタが市場を牽引していき、プラセンタ業界の基盤を盤石にしていったが、国産サラブレッド馬由来プラセンタが登場しプラセンタ業界に一石を投じた。サラブレッドという力強く、綺麗なイメージもあることから次第に国産サラブレッド馬プラセンタが注目されるようになった。特に、新規にプラセンタを販売する企業は先行する他社との差別化を図る意味で採用率が急増していった。 

 しかし一方では、商品化するまでのコストが高いという問題が生じる。国産サラブレッドの原料コストが高いためだ。それには大きな理由がある。国内のサラブレッドは「走って賞金をかせぐ」経済動物として生産されており、近年では年間7000〜8000頭前後の仔馬が誕生していると言われているが、馬の育成や管理などで莫大なコストがかかるため原料コストも高くなる。「サラブレッドの出産はある程度、日にちや時間が決められているため、獣医を含めて4〜5人のスタッフが立ち会います。そこに冷凍庫をもったスタッフが動向して鮮度を落とさずに回収し工場に持ち帰りますから管理は問題ありません。最近はより良いサラブレッドを育成するためにサプリメントなども肥料として使っているため、そういった馬の管理費用もかかるために、胎盤を販売して充当する大手牧場も増えてきましたし、今後も増量していきます。」(某メーカー)

 サラブレッドの繁殖期は毎年1月〜6月で3、4、5月が出産のピーク。当年度分をこの間で採取し販売は秋まで。それ以降が採取できないため供給量に限界はある。国内のサラブレッドに関していえば前述した通り1月〜6月に出産する。これは日本の競馬システムと連動している。日本の競馬自体は年間を通して開催されているが、日本の競走馬(サラブレッド)は2歳の6月から順次デビューする。生まれた年が0歳。そこから2年の育成期間を経てデビューする。また牝馬(ひんばと読む/メス馬のこと)が全て繁殖馬となるわけではなく、競走成績や血統背景などによって厳選された馬だけが繁殖馬となれる。競走馬が繁殖馬となる時期が概ね3月〜5月頃。その後、種牡馬からの種付けを経て受胎が確認されると約10か月後の翌年1月〜6月に出産する。このようにサラブレッドは徹底した管理や育成プログラムに合わせた生き物で、馬の中でも別格な存在と言える。

 そういった物理的要因もあり南半球(日本とは逆)などの海外産の馬プラセンタへの需要も増えてきているのが現状のようだ。「国内外産問わず、豚に比べれば原料コストも高く、高級指向なので販売会社の経営者や開発担当者も豚に比べ真剣度が明らかに高いですね。それなりのコスト高になるため、失敗は許されない覚悟の表れを強く感じます。特に中小の販売会社にとっては投資額も大きくなります」(原料供給メーカー)との現場サイドの声もある。

 プラセンタ製品は化粧品、健康食品、ドリンクタイプなど様々な形態の製品が流通されているが多くは豚由来のシェアが多い。馬由来の製品もシェアは拡大傾向だが、海外産のものが多い。それはやはり、一般消費者への販売価格を考慮した場合、国内産サラブレッドでは採算面で折り合わないという一面もある。逆に国内産サラブレッドを謳った製品が通常より低価格であった場合、配合量が少なめだったりするケースがある。配合量が少ないとエビデンスを訴求するための効果配合量に満たない場合が多いため注意が必要だ。

 今回は主に馬プラセンタの魅力について紹介してきたが、市場のシェアは豚由来プラセンタが多く、品質も良い。豚由来も馬由来も優劣の判断はできない。プラセンタは医療現場でも治療や予防の一環で有用されており、「女性だけでなく最近は男性の患者さんもプラセンタ注射やサプリメントを利用しています」(都内のクリニック院長)ということからも治療・健康維持・予防といった内面的な美容と健康の他、化粧品素材として外面的な美容へのアプローチができる素材という大きな特性を持つことからも、政府の政策の一つとして掲げられている「健康寿命の延伸」を実現させる素材として期待がかかる。

 

 

続きが気になる方はこちら!
TOPに戻る