2023年04月21日(金)

アンチエイジング最前線 「老化は治る」という新常識

解説 乾 雅人医師
【プロフィール】
銀座アイグラッドクリニック 院長
2010年、東京大学医学部卒業。同大学附属病院で初期臨床、外科専門研修を修了。同大学大学院では外科学(肺移植領域)を専攻。外科専門医資格を取得した後、2020年、銀座アイグラッドクリニックを開業。
https://ginza-iglad.com
乾 雅人医師
  • WHOは老化は治療すべき疾患と位置づけている。

 

 「老化は治る」。このような表現に対し、読者の方はどう感じるでしょうか? 怪しい。胡散臭い。というのが一般的な反応かと思います。

 しかし、最先端の研究者たちの間ではもはや常識になりつつあります。2019年にWHO(世界保健機構)が公表したIDCー11という国際疾病分類の第11回改訂版にも、明確に“老化”の概念が盛り込まれています。老化とはもはや、人類が克服すべき治療対象の疾患と定められているのです。

 「人類は老化という病を克服する」という共通認識を持つことは、極めて大きな意味を持ちます。歴史的インパクトを考慮すると、「地球こそが動いている」という地動説や、「人類は月に到達できる」というアポロ計画並みのインパクトではないでしょうか?

 今まさに、医学の常識がひっくり返ろうとしている真っ最中。人類社会におけるグレート・ローテーションが進行中なのです。

 

  • 老化は万病に共通するリスク要因

 

 

 がんの中で死亡数1位は肺がんですが、タバコが原因で肺がんになる可能性があることは広く知られています。

 男性ならばリスク4・8倍、女性ならばリスク3・9倍。受動喫煙でもリスク1・3倍と言われています。

 このことを理由に、禁煙キャンペーンが打ち出されたり、政策にも反映されたりしている一方で、老化による肺がんのリスクを考慮するならば、リスクは100~1000倍というところでしょう。

 事実、どんなに喫煙しても20歳で肺がんになることは極めて稀ですが、喫煙歴のない80歳の方が肺がんになることはよくあることです。

 では、がん死亡数2位の大腸がんではどうでしょう?加工肉(ハムやソーセージ)の摂取によりリスクが上昇することが昨今、指摘されています。それでも発症リスクは数割程度でしょう。

 一方で、老化を治療せずに放置することは、がんのリスクが100~1000倍に。

 やはり、老化を治療対象とし疾患を予防した方が良いことは自明です。

 がんに限らず、生活習慣病(糖尿病、高血圧、脂質異常など)については、もっとわかりやすいでしょう。

細胞が老化して「老化細胞」となると、周囲に炎症を引き起こし、SASPと言われる症候群を引き起こします。

 これは、内臓脂肪が周囲に炎症を引き起こし、生活習慣病を合併するメタボリックシンドロームに類似しています。

 メタボリックシンドロームの根本治療は、肥満の改善です。痩せることによって、内臓脂肪として蓄積した脂肪細胞からの炎症性物質も無くなります。

 結果として、炎症に伴う糖尿病や高血圧などの生活習慣病が改善します。

 同様に、「老化細胞」を除去、あるいは、何かしらの作用で炎症を沈静化(抗炎症)させることで、生活習慣病を一網打尽に出来るでしょう。やはり、治療すべきは「老化」なのです。

 もう、お気づきでしょう。老化とは・・・・・・・

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