健康ジャーナル

副理事長 森下 竜一 先生 理事長 吉川 敏一先生
  

2015年5月05日(火)

特別対談
特定非営利活動法人 日本抗加齢協会
理事長 吉川敏一先生VS副理事長 森下竜一先生

消費者にわかりやすく機能性の科学的根拠を表示
課題は第三者の正しい評価の必要性とより良い制度への育成

いよいよ食品の機能性表示制度がスタートした。 一定の科学的根拠があれば企業の責任において食品の機能性を表示することができる画期的な制度。 しかも、今回の制度はサプリメント形状の加工品のみならず、一般の加工品や農産物にまで適応される。 国際的に見ても一般食品に機能性表示を認めている国はなく、今後の運用次第では世界スタンダードに 成長する可能性を秘めている。
一方、企業責任という概念が日本で受け入れられるのかは時間を見なければならない。 安全性の確保や科学的根拠データも含めて全ての情報が開示されるという透明度の高い制度は 企業機密保持の問題や、第三者からの様々な評価と表裏一体でもある。
さて、今回の特別企画は特定非営利活動法人日本抗加齢協会 理事長の吉川敏一先生と 副理事長の森下竜一先生の特別対談。アンチエイジング(抗加齢)という言葉と概念を広く 世の中に浸透させた吉川理事長と、内閣府規制改革会議の委員として今回の食品の 機能性表示制度の実現に多大な貢献をされた森下副理事長に食品の機能性について アカデミアの立場から様々なご意見をいただいた。

──ご多忙のところ、両先生にお集まりいただき深く感謝申し上げます。 まずは日本抗加齢協会の吉川理事長にお伺いしたいのですが、 日本で「食品の機能性表示制度」がスタートしました。ご感想はいかがでしょうか?

吉川 「食品の機能性表示制度」は、いくつかの問題点は出てくると思いますが、 科学的根拠(エビデンス)のある食品は消費者がわかりやすいようにどんどん表示して いけばいいと思います。ただし、消費者が一目見て、その機能性表示が正しいと判断 できるのかという部分は正直、不安が残ります。ここは我々のようなアカデミアが きちんとお墨付きを与えるようにしたほうがいいと思います。 企業が個人責任で一方的にやるのではなく、専門的知識を持った第三者が きちんとそれを評価するということが必要ではないでしょうか?

──森下先生はこの制度の実現に際して、 規制改革会議の委員としてまさに中心的な役割をされました。

森下 第二次安倍内閣の規制改革会議が発足したのが平成24年1月24日でしたから、 すでに2年以上がたってしまいました。あっという間でした。いろいろとありましたが 「食品の機能性表示制度」はスタートしました。もちろんこれから健康食品業界を中心に、 今後、この制度をどうやってより良いものに育てていくのかという事が重要だと思います。

──吉川先生は農林水産省との食品の機能性研究等にも 参画されていらっしゃいますね。

吉川 2009年からアグロメディカルイニシアティブ (AMI) 研究会を定期的に開催してきました。健康増進のための機能性が科学的エビデンスにより 明らかとなり、生産プロセスから計画的に設計された農産物 (アグロメディカルフーズ) の創出を議論してきました。具体的には「タンニン類に着目したリンゴ」 「茶の生体調節作用の医学的検証と高含有品種育成など活用に関する研究開発」 や 「ケルセチン・イソフラボンの生活習慣病予防機能の科学的エビデンス強化と高含有 農作物の作出」 などのプロジェクトが農林水産省技術会議公募事業としても取り上げ られました。その中で、例えば、ケルセチン高含有タマネギ 「クエルゴールド」 を創出し、 そのメタボリックシンドロームに対する有効性を動物モデルやヒト疫学調査、 栄養調査、 ヒト介入試験などにより明らかにしてきました。

──今まで、国の食品研究で、行政と医師という組み合わせは あまりありませんでした。

吉川 そうですね。画期的なプロジェクトだと思います。重要なことは、 科学的手法により農林水産物・食品の機能性を証明するということです。 もうひとつ「ヒト臨床試験」が必須であることも強調しておきたいと思います。 その点において医師が参画したという事は大きいと思います。 こういった研究は産学官・異分野研究者の結集が重要だと思います。 まさにオールジャパンですね。

日本抗加齢協会の推奨マーク計画が消費者の「安心」へ

──機能性表示制度スタート後の今後の展開ですが……。

森下 今回の食品の機能性表示制度は企業責任において機能性を表示するという 制度ですが、やはり第三者がその機能性表示を担保するような仕組みがあるといいと思います。 例えば推奨マークのようなものですね。消費者にとってもそういった「推奨マーク」 のようなものがあった方が安心だと思います。日本抗加齢協会ではこの「推奨マーク」を 現在計画しています。これは更新性にしたほうがいいとも思っています。
吉川 農産物に関しては、こういった機能性成分がこれだけたくさん含まれていますよ、 というところまでは我々の研究で明確にすることができます。しかし、消費者が こういった情報を的確に判断して、安心して機能性表示食品を選ぶことができるように するためには、どういった形できちんと情報を提供できるかを考えなければなりません。 そのためのひとつのツールとして「推奨マーク」が指標になりえると思います。 例えば、野菜売り場に「健康が気になる人のコーナー」を作って「便通が気になる人」 「物忘れが気になる人」「血糖が気になる人」などのカテゴリーを作って、 そこに日本抗加齢協会の推奨マークがついた食材が並んでいるといった事も 想定できますね。消費者にとってみればその「推奨マーク」が一つの安心につながります。 その横に機能性をわかりやすく書いたリーフレットがあっても面白いです。 まさに消費者への食品の機能性の啓発に繋がります。

──忙しい消費者が安心して機能性食品を選べる 「指標」というわけですね。

吉川 そうですね。こういった制度のスタート時においては、何か1つ問題が起これば、 行政サイドではすべての商品に対して懐疑的に見てくるかもしれません。 それ以前に、行政は今回の制度の届け出から販売開始後の確認など、 膨大な量の作業をしなければなりませんので、大変な手間になります。 何か権威のある「推奨マーク」といった“お墨付き”があればそういった 行政の作業の軽減につながるかもしれません。

【本紙につづく】

 
 
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