2019.11.11(月)

⑤水の惑星 地球誕生の真実

山野井 昇 先生

地球には7割を占める豊富な水が存在し、もし水が地球上になかったら生命の存在もなかっただろう。当たり前のように存在している水であるが、「地球上の水はどこからやってきたのか?」という質問には、いまだ正確な答えが出ていない。

そんな地球と水の起源について、最初の簡単な説に「地球が形成された初期に小惑星の衝突によって水が地球にもたらされた」というのがある。

つまり水が、地球という惑星の形成時にすでに内在していたというのではなく、水素を含有する小惑星の衝突によってもたらされた物質に由来するというものだ。この背景には、小惑星に存在する水素が、地球の海水に含まれる水素と同じ比率の重水素を有しているというものだ。

一方、「太陽系星雲ガスの残留ガスに由来するもの」という説がある。その根拠となるのは、海水と地球のマントル近くから集められた水素の試料を比較すると、必ずしも個別の全水素中に占める「重水素」の比率が一致せず、地中の中心近くから採取された水素では、重水素の比率が海水よりも低くなっていることだ。

そして小惑星よりも重水素の比率が少ない水素を供給する可能性があるのは、太陽系星雲ガスであると力説する研究者もいる。

この説は、裏返せば遠く離れた場所にある惑星でも、星雲ガスによって水がもたらされている可能性を示唆するものだ。したがって地球に限らず、多くの惑星上に水素を含有する惑星である以上、生命の誕生は可能なのである。

近年の先進的な研究からも、惑星形成後も周囲には太陽系星雲ガスが漂っていた可能性が高まっている。そして惑星形成後に残っていたこれらの星雲ガスから、地球の内部に水素が取り込まれたという説が共感の輪を広げている。

いずれにせよ今日の「地球と水素と生命の研究」は、少なからず彗星の運行や、星雲ガス由来の水素原子や分子状水素など複数の要因が重なり合っており、最近の宇宙探査衛星から送られてくる様々な貴重な試料の解析データから更に信憑性の高い「水の惑星-地球生誕の真実」が証明されてくるだろう。

*重水素とは水素の同位体。原子核が陽子1つと中性子1つで構成される。

 

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