
前回は日本では薬師如来として知られている、アーユルヴェーダの神様ダンヴァンタリについてご紹介しました。
今回は、ダンヴァンタリのように病気や死を遠ざける医学の神様に近しい、ユニークな神様を紹介します。
その名はアシュヴィン双神。うり二つの双子のような神様で、輝くばかりの美青年です。翼のある馬にのり、蜜が滴るムチを持って、人々を癒し、治療し、子宝を授けていました。双子のような神様は、神様や人間を治療していましたが、特に人間の治療のために、人間に触れたり、人間界にいることが多いため、低級の神様として、神様だけが飲むことを許された「ソーマ酒」(神様のお供えとしてささげられる不死の薬酒)を、アシュヴィン双神は飲むことができませんでした。人間の治療をしてくれている神様なのに、ひどい扱いですね。二人の神様があるとき、年老いた聖人チャヴァナの美しい妻、スカーニャに一目ぼれします。若いスカーニャは年老いた夫に献身的に仕える良妻でした。二人のご縁は、もともと年老いた聖人チャヴァナを子供たちが、石を投げたりしてからかっていました。その子供の親がそれを見つけて、聖人チャヴァナにあやまり、娘のスカーニャを妻としてささげました。そんなきっかけにもかかわらず、二人は年の差婚でも仲の良い夫婦となりました。
アシュヴィン双神は、年老いた夫といて、若さを失うより、私たちのどちらかと結婚してください。と誘惑します。ところが、良妻のスカーニャは彼らの誘いを断ります。そこで、アシュヴィン双神は、年老いた聖人チャヴァナを治療し、若返らせ、そのうえで自分たちと比べて、どちらが夫にふさわしいか選んで欲しいと頼みました。アシュヴィン双神はよっぽど自信があったのでしょう。若返った聖人チャヴァナは驚くことに、アシュヴィン双神とそっくりな美青年でした。それでも良妻スカーニャは、自分の夫を間違えることなく選びました。また、夫である聖人チャヴァナは、自分を若返らせてくれたアシュヴィン双神に感謝し、神様に二人の功績を伝えて、ソーマ酒を飲むことを許してもらい、晴れて正真正銘の神様の仲間入りとなったアシュヴィン双神は、聖人チャヴァナからお供えされるソーマ酒を飲むことができました。
アシュヴィン双神の恋は実りませんでしたが、神様の仲間になり、沢山の神様や人間を治療し、医学の神様として愛されました。
なんとも不思議なお話ですが、美青年より、年老いた夫を選ぶスカーニャの献身ぶりも素晴らしいですね。インド神話には楽しいお話が沢山あります。これからも、一緒にアーユルヴェーダを楽しんでいきましょう。