2020.04.30(木)

「重い」「かさばる」「保存がきく」「コンプレックス」などが人気キーワード 〜卸通販チャネルEC市場調査で明らかに〜

 総合マーケティングビジネスの富士経済(東京都中央区) は、主要ECプラットフォームに需要が集約されつつある中で、新たな販売チャネルとして存在感が増している卸通販(以下、卸通販EC)市場の調査結果を「ECプラットフォームとの共存を模索するメーカーの通販チャネル戦略 2019」にまとめた。

 卸通販ECとはECプラットフォーム企業が商品の在庫を保有し、消費者に販売するチャネルであり、“ama zonリテール”“楽天リテールなどの呼称が用いられ、メーカーがECプラットフォームに直接出店するマーケットプレイス型とは区別されている。この調査では、卸通販チャネルにおける健康食品、食品、一般用医薬品・ 指定医薬部外品、日用品・他のEC市場に加え、健康食品、食品、医薬品など日用消費財メーカー計36社の自社通販における実績や販売戦略、卸通販ECの活用状況なども把握した。

<調査結果の概要>

 国内のEC市場は、2000年頃から本格的にサービスが開始された仮想ショッピングモールにおいて取扱品目の拡充、利便性の向上、サービスの充実化などが進められ、モバイル端末の普及により外出先や移動中の注文が定着したことで拡大を続けている。中でも伸び率の高い卸通販ECが注目されている。          

 健康食品メーカーは自社通販を中心としてきたが、自社メディアによる集客は限界を迎えつつあり、卸通販ECに目を向け始めている。またリアル店舗を地盤としてきた食品、医薬品、日用品メーカーも、市場は限定的なものの高い伸びを示し新たな販売チャネルとして存在感が増す卸通販EC専門の営業部署の設置などの対応を進めている。

 卸通販ECはamazon、楽天市場(旧Rakuten Direct)、LOHACOのECプラットフォームを対象とした。現状では卸通販EC化率は低いが、ほかのチャネルと比較し伸び率が高いことから、卸通販EC化率は毎年上昇している。なお、通販適性が高い売れ筋商品のキーワードは「重い」「かさばる」「保存がきく」「ニッチ」「日常消費」「コンプレックス」”などが挙げられる。

 健康食品では、商品の機能性や成分の説明のしやすさ、顧客情報の取得による囲い込みを行いやすいという理由から自社通販が中心である。しかし、自社通販での集客に限界を感じつつあるメーカーも現れており、卸通販ECの試験的な活用や検討を行う企業も増えつつある。なお、商品としては、プロテイン(粉末)、青汁、ノコギリヤシやエクオールなどホルモンバランス、マカやスッポンなどの滋養・強壮、ビタミンや亜鉛など認知度の高い成分のサプリメントが人気であり、一方で当用買いが多い二日酔い対策商品や認知度の低い成分のサプリメントは需要が少ない。

 食品では、量販店やCVSを主体としたリアル店舗の販売比率が圧倒的であり、ECは一部に留まる。ネット専用商品や付加価値商品の投入などによる自社通販も行われているが、展開できるのは大手食品メーカーに限られ、 卸通販ECへの注力を高める食品メーカーは増加している。また、共働き世帯が増え、買い物時間の短縮目的に、EC需要は増加しており、食品に強いamazonを中心に卸通販ECの市場は活性化が続いている。商品としては重く、汎用性が高いミネラルウォーター類を筆頭とした無糖飲料などが伸びている。このほか、無菌包装米飯・ レトルトライス、ツナ缶詰、パスタ、カフェインレス、ノンカフェイン飲料、リアル店舗で配荷が少ない“アレルギー対応食品”なども人気である。

 一般用医薬品・指定医薬部外品では、ドラッグチェーンを中心としたリアル店舗の販売比率が高いものの、2014年以降の段階的な医薬品のEC解禁に合わせて着実に卸通販EC化率は上昇している。商品としては、店頭よりも品揃えが豊富な漢方処方エキス製剤、育毛剤や妊娠検査薬など店頭購入をためらう商品、ビタミン剤(保健薬) や整腸薬などといった日常的に使用する商品が人気である。一方で、総合感冒薬や解熱鎮痛剤といった緊急性を要する商品や、ドリンク剤・ミニドリンク剤のように店頭価格と比較して値頃感が低い商品は需要が少ない。

 日用品・他では、日用品のうち消耗品として購入頻度が高い紙製品は、ECの活用が進みつつある。商品としては、定期的に消費し、かさばるため店頭でまとめ買いしづらいベビー用紙おむつが人気である。一方、ティシュペーパーはリアル店舗において集客の目玉商材として展開されることからECより安価なことが多く卸通販EC化率は低い。

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