2022.10.06(木)

東洋ライス 「コメの価値を可視化し、農業を元気に」

 日本人一人あたりのコメの消費量は年々減少し、全国各地で水田の耕作放棄が広がっている。

 東洋ライスは、コメが持つ本来の価値を「見える化」し、日本のコメ産業を盛り上げようと、コンソーシアムを立ち上げた。国立遺伝学研究所とも連携し、同社が開発した栄養価の高い「金芽米」の成分解析を進め、その健康効果を解明する研究も同時に行っている。

 

 

 東洋ライスが2005年に発売した「金芽米」は、東洋ライスが発明した「均圧精米法」によって精米された特殊な白米。均圧精米法では、玄米の表面からヌカを少しずつ均等に除去するので、玄米の皮と実の間にある「亜糊粉層」が残る。この亜糊粉層には、旨味や栄養成分が含まれるが、一般的な精米法では取り除かれてしまう。また、とぎ洗いすることで、亜糊粉層が流出しないよう「BG無洗米製法」により無洗米加工している。

 この「金芽米」は、コメの品種や産地を問わず、精製できるのが特徴だ。2015年には「金芽ロウカット玄米」、2020年には100%玄米由来のサプリメント「金芽米エキス」を発売している。

 近年、白米は肥満や糖尿病のリスクを高めるといわれ、ネガティブなイメージが強まってきた。玄米は健康に良いとされるものの、炊飯に苦労して長続きしなかったり、消化不良の原因になったりするなど課題もある。

 東洋ライスの雜賀慶二社長は、「コメは本来単なる炭水化物ではなく、生薬機能が備わっており加工の仕方次第でコメの価値は大きく変わる。多くの人に健康に良いコメをおいしく食べてほしいという思いで『金芽米』を開発した」と話している。

 

 金芽米を給食に取り入れている中村学園大学の付属保育園では、「野菜100グラム以上、食塩相当量2グラム未満」の給食を提供し、「食べ残しゼロ」を目標に給食改善を行っている。2015年から給食改善を進めてきたが、初年度は年間200キログラムの食べ残しが発生した。 

 そこで、習慣的に摂取し、1日の総エネルギーの50%程度を占めるコメを見直すことにした。玄米特有の有効成分「ガンマオリザノール」に着目し、玄米食を検討したが、導入するには、炊飯設備の見直しや幼児の好みに合うかといった課題があった。そうしたなか、ある栄養に関する学会のブースで、「金芽米」に出合った。

 「七分つき米」「白米」「金芽米」で食味試験を実施したところ、子どもたちの支持が最も多かったのが、「金芽米」だったため、2016年4月に保育園給食に「金芽米」を導入することを決めた。現在、中村学園大学の付属保育園では、金芽米を取り入れた「野菜100グラム以上、食塩相当量2グラム未満」の給食を提供しており、ほぼ残食がない。

 保護者アンケートでは、「風邪をひかなくなった」「(嗜好が変わって)ジュースの量が減った」といった子どもの変化が寄せられた。インフルエンザや新型コロナウイルスの感染率も近隣の保育園と比較して、3分の1程度にとどまっているという。

 

金芽米から「モミラクトン」と5つの「未知の成分」が発見

 

 東洋ライスは2022年1月、国立遺伝学研究所と研究プロジェクトを立ち上げた。東洋ライスの「均圧精米法」と研究所の「メタボローム解析」を組み合わせ、金芽米にどのような栄養成分があるのか、解明していくプロジェクトだ。その結果、金芽米から「モミラクトン」と5つの「未知の成分」が発見された。モミクラトンは、稲から発見された抗菌性物質で、大腸がんや糖尿病への効果が報告されている。これらは、当然、玄米にも含まれる。白米に精米する過程でほとんど失われるが、金芽米には残っている成分となる。

 遺伝学研究所の櫻井望特任准教授は「そもそも食品の約6割は、未知の成分でできており、不明なことが多い。この未知の成分には、有用な効果があるかもしれない。成分の断定(同定)には時間やコストもかかるが、金芽米の健康効果を子細に探究するカギになる」と説明している。

 東洋ライスが実施した実証実験では、3企業の社員が金芽米を常食したところ、3企業ともに医療費が約40%低減した。ある企業では、新型コロナウイルス感染率は、1.8%と極めて低水準であることが分かった。

 雜賀社長は「将来的に、エビデンスをもって金芽米の健康効果を科学的に証明していきたい」と語る。

 

TOPに戻る