2016.03.01(火)

食品の機能性が脚光を浴び、セルフケアに拍車

食品の機能性新時代∼注目素材∼
食品の機能性は新たな時代に突入


2015年4月1日に機能性表示食品制度がスタートした。2013年2月に規制改革会議から産声を上げたこの制度は同年6月の閣議決定の後、8回の有識者による検討会を経てガイドラインが策定され、食品表示基準に織り込まれるとともに、4月1日に施行された食品表示法を根拠法として運用が始まった。制度の詳細の検証は4月5日号と19日号の「健康ジャーナル 機能性表示食品制度1年を検証」に譲るとして、今回はこの制度の元となる「食品の機能性」をもう一度考えてみたいと思う。


そもそも食品の機能性研究を始めたのは世界で日本が最初である。1984年に文部省(当時)が「食品機能の系統的解析と展開」をスタートし、1987年の厚生白書には食品の第一次機能(栄養機能)、第二次機能(感覚機能)とともに、第三次機能(生体調節機能)が明記された。この流れが1991年の特定保健用食品(通称、トクホ)に繋がったわけだが、当初の食品の機能性研究とはかなりかけ離れた制度となってしまったことは非常に残念である。しかし、国が初めて食品の第三次機能を公に認めたことの意義は大きかった。
1990年代から2000年に入るころは、TVの健康番組で食品の機能性を取り上げることが多くなり、影響力のあるTV番組が特定の食品の機能性を取り上げると、その翌日にはスーパーからその食品がなくなるといった社会現象も起こった。しかしこれらの番組も相次いで起こった不祥事により2007年頃に打ち切りとなり、食品の機能性情報の発信は一時低迷期を迎える。  そうした中、2011年度消費者庁委託事業「食品の機能性評価モデル事業」が行われた。ω3系脂肪酸、ルテインなど主要11成分について科学的な評価が行われ、2012年4月にその結果が公表された。これは、過去に独立して行われた複数の臨床研究のデータを収集・統合し、統計的方法を用いて解析する「メタアナリシス」という評価系を用いた、日本の健康食品の世界では公で初めてのケースとなった。
さらに、2012年に第一次消費者委員会では「健康食品の表示の在り方検討会」が開かれ、食品の専門家・研究者、事業者団体等の有識者へのヒアリングを行い、第二次消費者委員会では国民一万人に対して、健康食品の利用状況等に関するアンケートを実施した。ここで実に60%の人が健康食品を利用している実態が浮き彫りにされ、行政の健康食品に対する意識が高まった。
こうした動きの中で2013年1月にスタートした第二次安倍内閣の規制改革会議において「新たな食品の機能性表示」が重要課題の一つとして採択され、半年の議論を経て2013年6月14日の閣議決定に至り、その後1年半の検討期間を経て2015年4月1日に食品表示法の施行とともに「機能性表示食品制度」はスタートした。  制度に関しては様々な角度からの検証が必要であるが、まずは食品の機能性(第三次機能)という概念を前提に議論が進んだことが今回の制度の大きな意義だ。食品の第3次機能は生体調節機能として具体的に、循環系調節、神経系調節、細胞分化調節、免疫・生体防御、内分泌調節、外分泌調節等があげられている。しかし、機能性表示食品制度では表示と名付けられているが、疾病・医療、医薬品との関係を考慮し、消費者の誤認を与えないという大前提の元、表示されない機能性もある。表示されるか、されないかということと、その機能性があるかないかということは全く別の問題である。
つまり制度上は表示できないが機能性は証明されている素材が多数存在していることは周知の事実であり、これは多くの関係者が暗黙のうちに認めていることでもある。
国も「自分の体は自分で守る」といったセルフケア、またかかりつけ薬局、かかりつけ医に代表される「個別医療」に大きく政策の舵を切った。
食品の機能性は使い方次第で大きく国民の健康に寄与する。そのためには保健機能食品に乗る「食品の機能性」はその道で、表示できない「食品の機能性」は別の道で消費者に正しい情報が伝わることを切に願う。
食品の機能性は利用する消費者が正しく理解して使用していくことで、国民の健康維持増進に大きな力を発揮することは間違いない。

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