オリザ油化(本社愛知県一宮市、村井弘道社長)は,血糖値上昇抑制素材としてマウンテンキャビアエキスを今秋の食品開発展(10月12日~14日)で上市する。
秋田県大館市の特産品として「とんぶり(ホウキギの成熟果実の加工品)」が知られているが、プチプチとした食感や、その見た目がキャビアに似ていることから海外では「畑のキャビア」とされ、マウンテンキャビアと呼ばれている。また、中国では「地膚子(ジフシ)」と呼ばれ、後漢時代の「神農本草経」には「膀胱の熱をとる、小便の出をよくする、腎の気を補う、長く服用すれば耳や目が聡明になり、身軽になり、老化を抑える」と記載され、2000年以上にわたり生薬として使用されてきた歴史がある。日本には平安時代に中国より渡来したとされ、江戸時代の文献である「農業全書」や「歌謡」にはホウキギの栽培の記録があり、平安時代から、茎は箒の原料として使用(ホウキギの名の由来)され、果実は精進料理などの特別な機会に食されていたとされている。
平成の時代になり日本のサポニン研究の権威である元京都薬科大学の吉川、松田らのグループによって、マウンテンキャビアの成分や生理活性に関する研究が精力的に行われ、その結果サポニンのmomordin Icが活性本体であり、ラットのグルコース負荷試験で血糖値の上昇を抑制することが報告された。作用機序は胃から小腸への糖質の移行抑制と小腸粘膜内のグルコーストランスポーターの抑制に基づく。従って、α-グルコシダーゼ阻害による血糖コントロール食品(サラシア,桑の葉エキスなど)と異なり、清涼飲料等で用いられる「単糖」のグルコースの吸収も抑制することを特徴とする。つまり、オリゴ糖や麦芽糖よりも低分子化されたブドウ糖や果糖のような糖質についても吸収抑制することで幅広い糖質吸収抑制を促す。
同社では四半世紀前のこの論文に着目し、社内ボランティアに対してグルコース負荷試験を行ったところ、優れた血糖値上昇抑制(遅延)作用を示すことを見出した(図)。
試験ではマウンテンキャビアエキス-P 200mgまたは400mgを摂取した30分後にグルコース50gを摂取し、経時的に採血を行って血糖値の推移を測定した。その結果、マウンテンキャビアエキス-P(200mg)の摂取により、グルコース摂取30および60分後の血糖値がプラセボと比較して有意に減少した。400mgの摂取量では30および60分後の血糖値変化量と血中濃度曲線下面積で、プラセボと比較して有意な減少が見られた。
同社では有効成分momordin Icの含有量を1%以上に規格化したマウンテンキャビアエキス-Pを開発した。推奨摂取量は200〜400 mg/回であり,一日のうちで最も糖質摂取の多い食事前(多くの場合夕食前)の摂取が効果的としている。
同社は今秋、機能性表示食品を目指した「新あいち創造開発補助金」をファンドとする本格的な外部臨床試験を予定しており、年内に試験が完了。来春には消費者庁への届け出を完了する予定だという。