岸田文雄首相は22日、肉や魚の細胞を培養して育てる「細胞農業」の産業育成に乗り出す考えを示した。「安全確保の取り組みや表示ルールの整備など新たな市場を作り出すための環境整備を進め、日本発のフードテックビジネスを育成する」と述べた。
同日の衆院予算委員会で自民党の中山展宏氏に答弁したもの。首相は「細胞性食品を含むフードテックは、持続可能な食料供給の実現の観点から重要な技術だ」と強調し「世界の食料問題の解決に貢献する取り組みを後押ししていかなければならない」と語っている。
細胞農業は再生医療の技術を使いアミノ酸などが入った液体のなかで細胞を培養する。人工的に牛や豚などの畜肉や魚介類を作り出す技術で、国際的に開発競争が進む。
一般の人が食べられるようになるには地方自治体などの販売許可がいる。培養肉は食品としての明確な定義がなく、原材料や製造工程に関する安全基準が未整備だ。安全性が確認できないものは食品衛生法の規定で販売が難しい。
加藤勝信厚生労働相は「研究開発の状況や安全性の科学的知見、国際的な動向を注視しつつ、安全面でどういった対応が必要かさらに検討したい」と指摘した。
食品表示のあり方も課題となる。河野太郎消費者相は「培養肉は結構可能性はあると思う。安全性の確認がなされて市場に出回るときには、表示をしっかりやっていくように努力したい」と話した。