2023.10.12(木)

アゼルバイジャン共和国日記(第5話)

 アゼルバイジャン共和国は、その独自の文化や料理スタイルで知られていますが、その中でも特に興味深いのがレストランでのお通し(前菜)文化です。アゼルバイジャンのレストランに足を運ぶと、最初に出てくるのはなんと「パン」!そう、どこに行っても必ずパンが出てくる印象です。

 

 日本ではお通しは季節によって変わることがあり、漬物、小鉢、お刺身、湯豆腐など小さな前菜やオリーブ、ナッツ、キッシュ、ブルスケッタなどのオードブルが一般的でこの文化は、お客様に対する心遣いやお料理の技術をアピールする手段として大切にされています。

 アゼルバイジャンでは円盤型のパンチョレティ、フランスパン、ナン、クロワッサンなど様々な種類のパンがお通しとして出されるのが一般的です。これにはどのような背景があるのでしょうか?

 

 まず、アゼルバイジャンはパンを重要視する国。その歴史的背景や文化的要因から、パンは生活の中心にあります。パンは種類によって異なる形や味わいを持ち地域ごとに特徴があり、単なる食事のスタートだけではなく人々が一緒に集まり会話を楽しむためのスペースを提供することで、おもてなしの象徴としても重要視されています。アゼルバイジャンの主婦たちは伝統的なパン作りに熟練し来客時には多様なパンを数日かけて焼きます。手をかけた肉、魚、野菜料理に何種類ものジャム、ナッツをテーブルいっぱいのお皿でお迎えするのがアゼルバイジャン流です。

おそらく、そのためにレストランでもパンをお通しとして出す習慣が生まれたのかもしれません。

 

 さらに、アゼルバイジャンの伝統的料理の一種でピティ(Piti)は通常は羊肉と野菜から作られるスープです。羊肉、ひよこ豆、ジャガイモ、トマト、タマネギなどの材料が使用されています。スパイスやハーブも加えられ長い時間煮込まれることが多いです。ミネストローネみたいで低カロリー栄養価が高く一皿で満足感あって私のお気に入り料理でもあります。食べ方もユニークでスープにちぎったパンを付けて食べながら具をフォークで潰して食べる。パンにしみた濃厚スープとほろほろ肉、豊かな自然農地で育った新鮮なお野菜のエキスが口の中であふれんばかり。

 このように豊富な種類の煮汁スパイスソースや副菜を使ったものが多いため、パンはこれらを拭いたり、一緒に食べたりする際のツールとして機能しているようです。

 

 また、色とりどりのたくさんの苺、胡桃、茄子、マルメロのジャムや数種類のナッツ、ドライフルーツ、ペーストがまるでこの国の風土と歴史が詰まった宝箱みたい。パンとチャイと一緒に楽しみます。

 パンは食事の一環として重要な役割を果たしています。さらには、ソーセージやサラミなどの加工肉食品がパンの付け合わせ的なセットになっている感じでした。日本ではソーセージ、サラミは豚肉が中心ですが、アゼルバイジャンでは牛や鳥のソーセージが主流です。アゼルバイジャンの主な宗教がイスラム教であると考えられています。どちらのソーセージも多少味は違いますがとても美味しかったです。日本と比べてみると少し塩気があるように感じましたが、パンにのせて食べると絶妙なハーモニーで色々な味を楽しめます。お野菜も一緒にするとサンドイッチですね。

 

 アゼルバイジャンのレストランでのお通しの習慣は、観光客にとっても新鮮な驚きとなることでしょう。食事が始まる前に出されるパンのお通しは、アゼルバイジャンの食文化とその背後にあるストーリーについての一端を知る機会でもありますね。

 

 

 

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