健康ジャーナル

【2014年05月06日より】
 

連載:ふかせひろしのキトサン徒然草 その2

グルコサミン、N–アセチルグルコサミンの最新知見
骨密度の増加や膝関節痛と運動機能の改善に効果

 キトサンの単糖であるグルコサミンやキチンの単糖であるN―アセチルグルコサミンは、キチン・キトサンやそれらのオリゴ糖である キチンオリゴ糖やキトサンオリゴ糖とともに、生体の機能に対する優れた働きがあることが明らかになってきている。 ヨーロッパでは1980年代からグルコサミン硫酸塩を変形性膝関節症などに対して臨床的に活用している。 またアメリカでは変形性膝関節症に対するグルコサミンの効果を紹介した書籍が注目を集め、グルコサミンのサプリメントが 大ヒットして市場を広げた。その影響もあって日本でも変形性膝関節症をはじめとする関節症の痛みを軽減する機能が注目され、 年間で1300トン以上がサプリメントに活用されていると推定され、多くの商品が市場に登場している。 そのような動きの中で、グルコサミンの機能に関する研究は進展し、その作用のメカニズムが急速に明らかになりつつある。

 その研究の最先端の成果を発表する場として2005年5月に発足したのがグルコサミン研究会だ。 グルコサミン研究会は、グルコサミンや関連物質に関して医学、薬学、栄養学、獣医学、農学研究に関する発表と情報交換、 啓蒙活動を行ない、学術の発展と健康増進に寄与することを目的としている。
 そして今年の2月、グルコサミン研究会(長岡功会長:順天堂大学教授)による第10回『グルコサミン研究会学術集会』 (奥村正裕学術集会会長:北海道大学大学院教授)が開催された。

 そこでは、サントリーウエルネス・健康科学研究所と京都大学大学院・人間・環境学研究所による ①『膝関節痛及び運動機能に対するグルコサミン含有食品の効果』、順天堂大学医学部と甲陽ケミカルによる ②『グルコサミンおよびN―アセチルグルコサミンは軟骨細胞においてサーチュイン1の遺伝子発現を亢進する』、 城西大学薬学部による③『グルコサミン類が骨芽細胞および破骨細胞の分化に与える影響』などの一般講演が行なわれた。

 

①は、膝関節痛のある中高年男女100人を対象にした二重盲検査プラセビ比較試験によるもの。グルコサミン塩酸塩,コンドロイチン硫酸、 Ⅱ型コラーゲン、ケルセチン配糖体、イミダゾールペプチド、ビタミンD3を含む被験食品(A群)とプラセボ食品(P群)にわけて16週間摂取させた。 膝関節痛はVASとJKOM、運動機能は通常歩行速度、膝伸展筋力で有効性を評価している。
 同研究チームは、VASとJKOMのスコアは 、両群で改善。A群での改善幅が大きかった。通常歩行速度は、8週間の摂取でA群が有意に上昇。 これはP群も上昇し群間差はなかった。膝伸展筋力は8週以降にA群で有意に上昇した。などの結果を報告。グルコサミン含有食品は膝関節痛を改善し、 運動機能を改善する可能性が示唆されると発表している。
 ②はヒト軟骨肉腫倍用細胞株を用いた実験で、グルコサミン、N―アセチルグルコサミンの添加でサーチュイン1遺伝子の発現量が有意に増加した。 SIRT1タンパク質はグルコサミン添加で増加した。同研究グループは、グルコサミン伽軟骨細胞のサーチュイン1の発現を増加することで、 軟骨保護然様を発揮する可能性が示唆されたものと考察している。
 ③はマウス骨芽細胞株とマウス大腿骨骨髄を用いて破骨細胞を初代培養して実験。グルコサミン塩酸塩は、骨芽細胞の石灰化を促進し、 多核破骨細胞数を減少傾向に。N―アセチルグルコサミンは石灰化影響を与えないが多核破骨細胞数を増加させた。 同研究チームは、前者が骨形成の促進と骨吸収の抑制による骨密度の増加、後者が、骨吸収の促進を介したクロストークの活性化だと考えられる考察し、 このようにメカニズム違うことから、それを考慮した利用法が望まれるとしている。

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