健康ジャーナル

【2014年6月17日号より】
 

連載:ふかせひろしのキトサン徒然草 その3

6糖のキチンオリゴ糖の効率的合成法を開発
免疫細胞のリガンドとしての研究に期待

近年になって、キチンが免疫細胞の1つであるマクロファージの受容体に特異的に結び付くリガンドであることが明らかにされた。キチンがマクロファージに結び付くとマクロファージは活性化する。マクロファージが活性化することでNK細胞、NKT細胞、T細胞などの免疫細胞の活性化が波及することが考えられるようになっている。  この事実が明らかになる以前、東北薬科大学の鈴木茂生教授らの研究グループがマウスを使った実験で、がん細胞・サルコーマ80を移植したマウスにキチンオリゴ糖(N|アセチルキトオリゴ糖)、キトサンオリゴ糖(キトオリゴ糖)を腹腔内投与、静脈投与するとがん細胞の増殖を抑制することを明らかにしている。また北海道大学の東市郎教授、戸倉清一教授らの研究グループは、がん細胞の転移を抑制することを見出している。

これらの研究成果は、マスコミに大きく取り上げられ、報道された。  これらは腹腔内投与、静脈投与での実験結果であり、経口投与で行なわれたものではない。しかしこれらの研究成果から、その可能性に着目した医師が、がん治療にキチンオリゴ糖、キトサンオリゴ糖配合健康食品の経口投与を行い、大きな成果を上げている。

この臨床試験の成果は、毎年キチン・キトサンシンポジウムで報告されている。  鈴木茂生教授の研究によれば、がん細胞の増殖抑制には6糖のキチンオリゴ糖、キトサンオリゴ糖が高い効果を示している。特に6糖のキチンオリゴ糖の効果が最も高い。

現在、市場に出ているキチンオリゴ糖、キトサンオリゴ糖は2糖から10糖までの糖鎖のオリゴ糖が混合している。  それは6糖のキチンオリゴ糖を効率よく得ることが一般的な製法では難しかったからである。  ところが、2012年、北海道大学で開催された第26回キチン・キトサンシンポジウムにおいて、画期的な研究成果が静岡大学大学院、同大学農学部の研究グループによって報告された。  3糖のキチンオリゴ糖を出発原料として、30%硫酸アンモニウム含有酢酸緩衝液に高基質濃度で溶かし、リゾチームを添加。40℃で反応させた。この結果、従来の合成方法に比べて、重合度が6から8糖のオリゴ糖を選択的に合成することに成功した。高純度のキチンオリゴ糖6糖が99%以上得られたのである、  また6糖のキチンオリゴ糖だけがハイドロゲルとして特有の熱可逆的応答性を示すことも明らかになった。6糖のオリゴ糖を使った抗がん作用の研究が期待される。

【つづく】

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