健康ジャーナル

【2014年10月7日号より】
 

連載:ふかせひろしのキトサン徒然草 その6
キチン・キトサンの機能性研究将来展望
最先端はキチンナノファイバー研究
スギノマシンが日本初の大量生産·販売を開始

近年、キチン・キトサンに関連する研究において急速に進展している分野にキチンをナノファイバーにする技術と、それによってつくられたキチンナノファイバーの機能性の研究がある。

この研究に先鞭をつけたのは、鳥取大学の伊福伸介准教授の研究グループだ。

同研究グループは、カニ殻などに含まれているキチンをナノファイバーの形で大量に低コストで製造する技術を開発。表面キトサン化キチンナノファイバーの調整、さらにキチンを脱アセチル化したキトサンナノファイバーの製造技術も開発している。同研究グループでは、シイタケ、エリンギ、ブナシメジ、マイタケ、マッッシュルームなどの栽培が可能なキノコからキチンナノファイバーの単離にも成功している。

また東京大学大学院農学生命科学研究科の磯貝明教授の研究グループは、イカの腱由来のβ–キチンを用いて柔軟で長い特性を持つβ–キチンナノファイバーを調整している。さらに一関高専・信州大学・苫小牧高専・岩手県産業技術センターなどの研究グループもイカの腱からβ–キチンナノファイバーを調整し、その物性の評価に取り組んでいる。

キチンをナノ小繊維(キチンナノフィブリル)に解繊するためには粉砕する装置を用いる。その装置メーカーではスギノマシン、増幸産業などがある。スギノマシンでは、同社の粉砕技術(ウォータージェット技術)を駆使して日本で初めてキチンやキトサン、セルロースなどの生物由来の超極細繊維バイオマスナノファイバー「BiNFi-s」の大量生産、販売に取り組んでいる。また受託加工も行なっている。

キチンナノファイバーの生物に対する活性や効果に関わる研究では、2011年、2012年に鳥取大学の南三郎教授・斎本博之教授の研究グループが皮膚に対する生物学的効果や潰瘍性大腸炎に対する効果を報告している。皮膚に関してはヘアレスマウスを用いた実験で上皮層の肥厚とコラーゲンネットワークの増加が認められた。ヒト皮膚に表面キトサン化キチンナノファイバーの塗布試験では、塗布1時間後から有意に保湿効果が認められ、4時間、8時間目では0・1%の危険率で有意に保湿されたと報告している。

潰瘍性大腸炎ではモデルマウスを用いて、キチンナノファイバーと従来のキチンを比較。キチンナノファイバーが潰瘍性大腸炎を抑制することを明らかにしている。キチンナノファイバーはミエロペルオキシダーゼ活性と血清IL–6濃度を抑制したのである。

北海道大学の研究グループは、歯髄に豊富に存在する幹細胞は神経移植のドナーになるが、神経縫合に高度な技術を必要とする。

それを容易にするために、キトサン・ナノ繊維チューブに歯髄を挿入してハイブリッド化し、有効性を調べた。同研究グループは、ハイブリッド化することで架橋移植が容易になったと発表している。

また2014年には、鳥取大学の研究グループが表面脱アセチル化キチンナノファイバーの抗肥満効果を検討している。高脂肪食誘発肥満モデルマウスを用いて、キチンナノファイバー、表面脱アセチル化キチンナノファイバー、キトサンを摂取させ、肝臓と精巣周辺の脂肪組織、血清レプチン、TNF–α濃度を測定した結果、表面脱アセチルかキチンナノファイバーは、キトサンと同程度かそれ以上の抗肥満効果を発揮することが確認されたと報告している。

【つづく】

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